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解説論文「地震・放射線のストレスとうまくつきあい続ける方法/掛札逸美」の公開

デジタルヒューマン工学研究センターでは、社会心理学的側面を含めた生活・行動モデルの研究をしております。

社会心理学を専門とする研究員の掛札が、震災後に被災地のみならず被災地外でもおきる低レベルで長期的なストレスにいかに対処するかをまとめました。 ストレスを感じておられる方だけでなく、部下を抱えておられる方も必読です。みなさんのストレス対策にお役に立てれば幸いです。

はじめに

東日本大震災以降、日本列島周辺は地震の活動期に入り、いつ次の大きな地震が来ても不思議はないと言われています。 人々のなかには、「いつ次が?」という不安が高まっています。 同時に原子力発電所などの事故、放射線漏出・被曝に対する不安も続いています。 不安やストレスの感じ方は一人ひとり違うものですが、不安を強く感じる人、ストレスを感じる人にとって、こうした気持ちは、「気にしない」ことで消えるものではありません。 また、こうしたストレスがからだや心に及ぼす影響も、軽視できるものではないのです。

不安を引き起こす状況が数カ月、あるいは数年と続くことがわかっている今、私たちは、自分自身や家族のストレス対策(ストレス・マネジメント)に積極的に取り組む必要があります。 また、職域、地域でも集団のリスク管理(リスク・マネジメント)として、ストレス・マネジメントに取り組むことが不可欠です。 職域では、強い不安や鬱、それに起因するいらだちや怒りといった問題への取り組みが重要でしょう。 地域では、ストレスに弱い立場に置かれている人たち、すなわち高齢者、小さい子どものいる保護者、妊娠している女性、心身に疾患等を持つ人たちをケアする必要があります。 地域の職場では、こうした人たちの不安を直接受ける立場にいる保育者・教諭、保健師、介護士、ソーシャル・ワーカー、行政の窓口等で働く人たちの心とからだのケアに今すぐ取り組み始めることが求められています。

これから夏に向けて、暑さや湿度という環境ストレス要因も高まっていきます。 すでにある不安やストレスに環境ストレスが加われば、心やからだへの影響が悪化していくことはまちがいありません。 ストレスによる短期的な、中長期的な影響が出始める前に対策をとっていきましょう。

拙文が、皆さまのお役に少しでも立てれば幸いです。

(独)産業技術総合研究所
デジタルヒューマン工学研究センター
傷害予防工学研究チーム
特別研究員 掛札逸美(博士・心理学)

論文概要

  1. 日本人の強さの陰で進む、心の危機:低レベル・慢性ストレス
  2. この「低レベル・慢性ストレス」が「未曾有」な理由
  3. 「低レベル・慢性ストレス」とは、どんなストレスか
    • (1) 低レベル・ストレス
    • (2) 慢性ストレス
  4. 今、起きていることを「ストレス」の観点からみると
  5. なぜ、今の「低レベル・慢性ストレス」は深刻なのか
    • (1) 状況と人の見方によって変わる、ストレス影響
    • (2) 地震も放射能も「自分には解決できない」=高いストレス
    • (3) 「終わらない地震」は無力感につながる
  6. この低レベル・慢性ストレスは健康にどんな影響を及ぼすか
    • (1) 災害とストレス
    • (2) 慢性ストレスによる健康被害
  7. 健康影響を低減するには-1:日本文化をふまえたソーシャル・サポート
    • (1) 身のまわりにソーシャル・サポート・ネットワークを
    • (2) 「がまん」には限度がある
    • (3) 「がんばりすぎ」は危険
    • (4) 「大丈夫」「気にしないのが一番」は禁句。「理屈で説得」もダメ
    • (5) ソーシャル・サポート作りが早急に必要なのは…
  8. 健康影響を低減するには-2:今すぐできるストレス・マネジメント
    • (1) 「消えない不安」を軽くする
    • (2) カウンセリング、精神医療の活用も
  9. 不安や痛み、悲しみを成長につなげる:心的外傷後の成長

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