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研究内容

身体にフィットする製品設計を支援するソフトウェアの公開

研究開発の概要

生命工学工業技術研究所(現: 産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター)は、身体にフィットする製品(靴、衣服、眼鏡、補装具など)の設計を支援するソフトウェアを開発し、(財)日本産業技術振興協会を通じて公開(有料)しました。 本ソフトウェアは、Windows NT/2000の環境で動作するソフトウェアで、後述するFree Form Deformation法(FFD法)による人体形状分析技術を、簡単に利用できるようにパッケージ化したものです(図1)。 このソフトウェアを用いれば、たとえば、個人のからだの形にフィットする製品の設計や、特定の顧客集団の特徴を表す平均形状、標準偏差形状の計算などを行うことができます。

図1: ソフトウェア画面の例
図1: ソフトウェア画面の例

ライセンス契約第1号となった(株)アイウェアラボラトリーでは、自社開発の足の3次元形状計測ができる情報端末INFOOTとこのソフトウェアを組合せ、靴販売店の店先で消費者の足形状を計測し、それを平均形状と比較して見せる情報サービスを開始しました。 将来的には、本ソフトウェアのFFD変形機能を利用して、消費者個人の足形状にフィットする靴を低価格かつ迅速に提供する情報サービスを行います。

研究開発の背景

人の身体にフィットする製品の設計には、主として人体寸法などの1次元量が用いられてきました。 しかしながら、身体のまるみや、ねじれなどの「3次元的な形の特徴」を十分に反映することができず、よりフィットした製品の設計には、3次元の形の情報を扱える方法論が求められていました。

生命工学工業技術研究所(現: 産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター)では、足と靴のフィット性向上を例にして、身体3次元形状の個人差を定式化し、それを製品設計に応用する技術、及び3次元形状の統計処理技術の開発を進めてきました。 特に、コンピュータグラフィック技術であるFFD法を用いて人体3次元形状の個人差を定式化する方法は、文化服装学院との新しい衣服用人台の開発に用いられるなど、具体的な産業応用実績を上げており、これ以外にも、国内外の靴メーカ、下着メーカ、眼鏡フレームメーカ、補装具メーカなどと共同研究を進めています。 今回は、このFFD法を用いた人体形状分析技術を、パソコンで動作するソフトウェアとしてパッケージ化することで、より一層の技術の普及を目指しました。

研究開発の内容

FFD法とは、図2に示すように、3次元物体の周囲に制御格子点を設定し、この制御格子点を動かすことによって、内部の物体の形状をなめらかに変形する方法です。

図2: FFD法
図2: FFD 法

生命研(現: デジタルヒューマン研究センター)では、変形された物体ではなく、変形するための格子点の歪みを利用することを考えました。 つまり、2つの物体があって、そのデータ点がすべて互いに解剖学的に対応がついているならば、人体形状Aを人体形状Bに変換するようなFFD変形格子(空間の歪に相当する)を計算で求めることができます。 そして、そのFFD変形格子が、2つの人体形状AとBの「個人差」を定式化したものになります。 たとえば、人体形状Aが、非常に標準的な体型で、既存の製品A'がよくフィットする場合、AとBの個人差を表すFFD変形格子を、Aに適合する製品形状A'に適用することで、人体形状Bに適合する新しい製品形状B'を得ることができます(図3)。

図3: FFD 法による個人差の定式化と応用
図3: FFD 法による個人差の定式化と応用

また、AとBのFFD変形格子の歪の大きさは、2つの人体形状の3次元的な形の違い(形態間距離)を表しており、多数の人体形状について、この形態間距離行列を求めて、多次元分析することで、図4のような形の分布図を得ることができます。 また、この分布図上の仮想的な形状として平均形状や標準偏差形状を計算することも可能となります。

本ソフトウェアは、このような「3次元形状の個人差に応じた製品変形」と「3次元形状の統計処理」を実現するための基本ツールです。 2つの人体形状を読み込み、オリジナル形状をターゲット形状に変形させるFFD変形格子を計算する機能と、その変形格子に基づいて製品形状を変形させる機能を持っています。 また、2つの形状を重ね合わせて表示し、その違いを分かりやすく観察することもできます。

図4: FFD 法による日本人女性の足部形状分布
図4: FFD 法による日本人女性の足部形状分布

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ライセンス契約事例

ライセンス契約の第1号となった、(株)アイウェアラボラトリーのライセンス事例を紹介します。

(株)アイウェアラボラトリーは、足形情報端末(ネットワーク接続可能な低価格の足形状計測装置) INFOOT(図5)を開発し、これを使った足形情報サービスビジネスをまもなく開始します(2001年1月25日)。 INFOOTを靴販売店に設置し、靴販売店を訪れた顧客(一般消費者)の足形状を計測し、それに基づく情報を販売店と顧客個人に提供するビジネスです。 提供する情報としては、(1)足部3次元形状、(2)靴選びに必要となる寸法項目があり、これに合わせて、契約販売店ごとの顧客・非顧客のINFOOT利用の履歴情報を購買行動データとして販売店へ日次配信します。

図5: 足形情報端末INFOOT
図5: 足形情報端末INFOOT

第1段階では、顧客の足部3次元形状を平均的な足形状と比較表示し、顧客の足形状のどこに特徴があり、どういう靴を選んだり、どのように靴を修正するのが適当であるかを説明するために、本ソフトウェアを活用します。 本ソフトウェアの表示機能を用いた、ASPビジネス[注1]です。

第2段階では、顧客の足部3次元形状データをFFD法で分析し、顧客の足に適合する靴型形状を計算、その適合靴型と既存靴型の類似度得点を計算したり、あるいは適合靴型そのものを実体化するサービスを行います。 契約販売店は、類似度得点に基づいて、適合しやすい靴を探して顧客に勧めたり、あるいは、個別適合する靴を低価格で提供したりできます。 ここでも、本ソフトウェアが使われます。

第3段階は、2次ビジネスです。 (株)アイウェアラボラトリーと販売店の契約では、足部3次元形状と性別、年齢のデータは、すべて(株)アイウェアラボラトリーのサーバーにコピーが保存されます。 顧客は、身近な情報端末(PC,携帯電話など)からID番号で自分の足に無料アクセスでき形状計測をした販売店とは異なる販売店でも買い物ができます(たとえば、電子商取引でも)。 この膨大な足形状情報に基づいて、統計データ提供ビジネスを行います。 ここでは、靴メーカなどからの委託により、特定のサイズ、年齢、性別ごとに足部3次元形状の平均形状や標準偏差形状などを計算し、販売します。 この3次元形状の統計処理にも、本ソフトウェアが使われることになります。

なお、(株)アイウェアラボラトリーに続いて、 (株)ワコール(株)ホリカワ文化服装学院(社)人間生活工学研究センター三洋電機(株)Spain IBVにライセンスを提供しました。 人のからだは、大きさの変化に伴って形も変わる特性(Allometry)を持っていますが、それをFFD法で3次元的に分析し、自社製品のサイズバリエーションに応用する用途などで利用されるようです。 その他、(社)人間生活工学研究センターでは同センターの管理する膨大な人体形状データの統計処理に、文化服装学院では衣服用人台の開発に、IBV: Institute of Biomechanics of Valencia-Spainでは適合靴の設計などに利用されます。

注1 ASPビジネス: Application Service Providerビジネスの略。 ASPは、任意の組織に対して各種アプリケーションの機能を提供・および管理する業者、を意味する。 たとえば、INFOOTで計測したデータが、インターネット経由でアイウェアラボラトリー社に送られ、そこで平均足形状との違いを本ソフトウェアで計算し、その結果のイメージを靴販売店の店先にあるパソコン画面(WWWブラウザなど)に提示するようなスタイルである。 従来のように、ソフトウェアプログラムをパッケージとして売ってしまわないで、プログラムの役に立つ機能の部分だけを従量制で提供することになる(アイウェアラボラトリー社の場合は定額制のようである)。

試用版

こちらでDarcii-tソフトウェア試用版がダウンロードできます。 【LZH版】 / 【ZIP版

お問い合わせ

デジタルヒューマン研究センター

河内まき子 [javascript protected email address]
持丸 正明 [javascript protected email address]

(株)アイウェアラボラトリー

木村 幸三 (代表取締役)
〒562-0035 大阪府箕面市船場東1丁目10−9 箕面フレールビル 5F
TEL: 072-726-2231
FAX: 072-726-2232
URL: http://www.iwl.jp/
E-mail: [javascript protected email address]

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