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研究内容

関節運動情報への電子透かし埋め込み

背景

高性能コンピュータと高速ネットワークの急速な普及に伴い,マルチメディア技術を用いて制作したデジタルコンテンツを安全に配信するための社会基盤が必要になってきている. デジタルコンテンツは複製や再配布が容易であるため,悪意ある利用者によって不正に複製・再利用される危惧のあることが,デジタルメディア文化の本格的拡大の障害となっている. デジタルメディア技術を用いた産業や文化の健全な成長のためには,著作権の主張,不正な複製の防止,あるいは正当な課金の仕組みが不可欠である.

電子透かし

フローチャート

デジタルコンテンツに対するセキュリティの高い著作権保護技術の一つとして,電子透かしがある. 電子透かしとは,人間に知覚できないようにデジタルコンテンツを変更することによって,コンテンツとは別の情報をコンテンツ自体に埋め込む技術をいう(図参照). これまでの電子透かしは,ほとんどが「古典的」なメディア形式,例えば音声,静止画,動画を対象としていた. しかし近年の電子情報技術の進歩に伴い,一段抽象度が高くより本質的なメディアを保護する必要性が生じつつある. モーションキャプチャなどによって得られた人体の関節運動情報はそのような新しいメディアの一つである.

本研究では,関節運動情報に対して適用可能な電子透かしの手法を提案する. 関節運動情報は人体の関節角度や関節座標の時系列であり,映画,ゲームソフト,CGアートなど作品を制作する際に,人間の全身運動を違和感なく表現するために不可欠な情報である. 提案する手法の基本となる部分は任意の対象物のモーションに対して適用可能であるが,デジタルコンテンツ制作において最も需要の多い人体のモーションを対象とし,電子透かしの埋め込みアルゴリズムと,最終コンテンツであるCGアニメーション動画像から透かしを検出する方法を提案する.

電子透かし埋め込み

透かしの透明性と頑健性を保証するために,運動情報のスペクトル領域で電子透かしを埋め込む. 具体的には,運動情報を離散ウェーブレット変換し,スペクトラム拡散符号化を用いて電子透かしを埋め込む. スペクトラム拡散符号化法とは,対象となるデータを周波数分解し,情報を埋め込む領域を周波数空間で拡散させることによって秘密性を高める符号化法である. 拡散させるスペクトルは,人間の知覚特性に基づき決定することにより,視覚的な違和感を最小化し,透かしの頑健性を最大化する. また逆運動力学を考慮して電子透かしを埋め込むことによって,人体と床面の間にある幾何学的な拘束等を考慮できる(図参照).

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電子透かし検出

剽窃された可能性のある運動情報が与えられたとき,これを手元に保管してある運動情報と位置合わせする. これにより両者の差分を検出し,埋め込んだ電子透かしを検出することが可能となる. ただし第三者が運動情報を盗用する場合,入手可能な運動情報は,さまざまな信号処理を受けて改変されている可能性がある. そこで,運動情報がCGアニメーションとしてレンダリングされている場合も含め,元の運動情報と疑いのある運動情報を位置合わせする方法を提案している(右図参照).

提案する手法で埋め込んだ電子透かしは,平滑化,再サンプル化,ノイズ付加,スプライン補間など,多くの典型的な信号処理の手法を用いた攻撃に対して頑健である. 実験では,これらの攻撃を行った運動情報から,10-3∼10-100程度の誤検出確率で透かしを検出できる.

registration

電子透かし検出

  1. Shuntaro Yamazaki, “Watermarking Motion Data”, In Proc. Pacific Rim Workshop on Digital Steganography (STEG04), pp.177-185, Nov 2004 [pdf] [avi]
  2. 新聞記事,日経産業新聞,2005年4月5日 [jpg] (Japanese)

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