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研究内容

“息づかい特徴”による痛みやストレスのセンシング

この研究プロジェクトは終了しました...

研究のねらい

これまでの実験的な生理心理研究の成果により、心的な負担の指標として、血圧や心拍数の変動、精神性発汗などの自律神経系指標、唾液や血液に含まれるコルチゾール等の内分泌系指標が開発されています。

しかし、これらの指標を”日常生活”中で測るとなると様々な問題が生じます。

例えば、連続的な血圧変動を計測する装置は実在していますが、これを長時間装着していると指先がしびれたり、台所作業やキーボード操作などの指作の作業が大きく阻害されてしまい、日常的な生活の中で測ることは現実的ではありません。 一方、呼吸や心拍数変動などの場合、計測自体は比較的少ない負担で行う事が可能ですが、「なぜ、その瞬間に心拍数が上昇したのか?」という原因には様々なものが考えられ、例えば、運動によって上昇したのか、あるいは心的負担によって上昇したのかを分別する技術が必要となります。

そこで、本研究では次の3つのアイデアに基づき、日常生活下でのストレス計測を行う技術開発を進めています。

(1) 高負担・高精度指標に対する低負担・低精度指標の相関モデル:
連続血圧や唾液など計測に多少の困難性を伴う高精度指標群と、心拍数変動や呼吸波形などのウェアラブル計測可能な指標群を同時に計測し、両データ間の関係性を解析することで、高精度指標と同等のストレス検知能力を持つアルゴリズムを構築しています。

(2) 多指標合成によるモデル構築:
様々な外的・内的刺激を受ける日常生活下では、例えば、心拍数だけ...で心的負担を検知する事はほぼ不可能です。 カラダの動きの影響、呼吸状態の影響などを加速度センサや呼吸センサを用いて同時計測し、心拍変動に影響を与えると思われる原因を一つ一つ明らかにしながら、最終的に心的負担の影響のみを抽出するアプローチについて検証しています。

(3) 新たな指標開発:
痛みやストレス状態では、呼吸動作が不安定になる、ため息が頻発する等の特徴が現れ、心的負担の有効な指標となると考えられます。 本研究では、これらの“息づかい”特徴に注目し、息づかい特徴量と従来指標との関係性を解明した上で、新たなストレス指標としての有効性を検証しています。

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研究課題(1): 局所麻酔下治療の患者反応モデル

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■ 背景

歯科や耳鼻科の治療・手術では、患者さんが緊張したり不安を感じたりする場面が多く見られます。 この理由の一つとして、手術操作によって生じる振動や音、さらには麻酔で抑えきれない痛みを知覚している事が挙げられます。

本研究課題では、局所麻酔で行われる内視鏡下副鼻腔炎手術(いわゆる蓄膿症の手術)を対象とし、実際の手術中の患者さんにご協力頂き、手術操作と患者さんの反応を計測し、それらの因果関係を解析した上で、刺激と反応の関係モデルを構築する研究を行っています。

■ 内視鏡下副鼻腔炎手術

この手術を簡単に説明すると、内視鏡と鉗子などの手術器具を用いて、鼻の中のポリープ・病的粘膜や余計な骨壁などを取り除きます。 これにより鼻の通りを良くすることを目的としています。

この手術は局所麻酔で行われます。 鼻腔・副鼻腔内はポリープや骨壁で隔てられながら奥へと連なっており、節で隔てられた竹筒のような構造を持っています。 そのため、ポリープや骨壁を除去し、その先の開いた部分に麻酔を追加するという作業を何度も繰り返しながら手術が進行します。

麻酔の追加は、手術の進行状況や患者さんの状態を見ながら医師が適切なタイミングを見計らって行います。 また麻酔追加と同時に挿入される休憩時間も、患者さんが安定している場合は短く、疼痛時には長めに取るといった具合に調整されています。

■ 研究内容と成果

計測:

モデル化:

結果:

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研究課題(2): “息づかい”特徴による痛み検知技術

■ 背景

局所麻酔下の治療では、患者さんの痛みを的確に把握する事が重要です。 これにより、適切な麻酔処置を行う事ができ、安全で低負担な治療を実現する事ができます。

しかし、口頭による確認や患者さんのカラダの動きによる痛み検知は難しく、熟練したお医者さんでも判断に迷う場合があります。 また、血圧の連続的な変動を観察することで、より的確に患者さんの痛みを推測することができますが、現在の装置では患者さんに大きな負担(体を拘束する、指先を締め付けるetc.)がかかってしまいます。 さらに、連続的な血圧変動が低負担で計測出来たとしても、その変動が痛み由来なのか、力みの影響なのか、あるいは単なる呼吸性の変動なのか、といった原因を推定する必要があります。

そこで、本研究では、比較的低負担で計測する事ができる患者さんの心拍数変動と、呼吸波形上に現れる特徴的な形状、息づかい特徴に注目し、これらの変化・出現パターンを合成する事により、血圧変動を推定するモデルの構築を行っています。

■ 息づかい特徴

痛みやストレス状態では、呼吸動作が不安定になる、ため息が頻発する等の特徴が現れ、心的負担の有効な指標となると考えられます。 そこで、手術中に現れる様々な呼吸形状を抽出し、心拍数と血圧の変動に関係のありそうな特徴的な呼吸形状に注目しました。

以下に、今回注目した3つの特徴形状を示します。

■ 研究内容と成果

モデル化:

結果:

■ 息づかい特徴導入の効果

本研究では、息づかい特徴と心拍数変動の出現/変化パターンに注目することで、血圧変化方向を推定するモデルを構築しました。 しかし、心拍数や血圧変動の観察だけで痛み検知を行うことは困難であり、その原因が、単に呼吸亢進による変動なのか、あるいは痛みによる変動なのかを分別する必要があります。 呼吸数や振幅の変化量だけでなく、呼吸波形の形状そのもの(息づかい特徴)に注目することにより、患者さんの痛み知覚状態だけでなく、力み状態の程度などを推定できると考えています。

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