人体デジタルモデルに基づくオンデマンド着装品
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先進国では、大戦後の栄養改善に伴い、急激に身長が伸びています。日本でも、身長190cmの若者と140cmのお年寄りが同時に暮らす時代となっているのです。人類は、かつて経験したことのない、大世代差時のまっただ中にいます。量産品だけでは、カバーしきれないほど、皆さんの体型は多様化しているのです。そこで、われわれは人の体の形を測り、そのばらつきを知って、それらをカバーする着装品を設計したり、あるいは、貴方の体型に合わせてフィット感の良い、かつ、貴方の感性にあった製品を設計する研究を進めています。 |
人体形状を測るには、体動揺の影響を受けることなく迅速に、かつ、股の間や脇の下、耳の裏、足の裏なども隠れなく、そして、精度良く精密に計測できる装置が必要です。このための高速・隠れなしスキャナの開発を行いました。また、店頭で個人の人体形状を測るには、コンパクトで低価格であることも必要です。企業と共同で低価格・可搬型の足形状スキャナを開発しました。 |
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計測したデータは、そのままではただの点の集合でしかありません。これを人間のデータとして扱うには、人間機能情報を付加しなければなりません。そこで、人体の解剖的特徴点(骨の突出、靱帯の走行などによってきまる点)に基づいて、どの人も同じ点数、同じ幾何学構造の形状モデルで再表現します。これで、個人の比較が容易になります。 モデル化された人体形状間の相違を、空間の歪(Free Form Deformation法)で記述し、その歪関数を用いて製品形状を個別修正することも可能になります。 足形状をモデル化するソフトウェア「Di+」、モデル化された人体形状の個人差を空間歪として定式化し、製品形状変形に利用するソフトウェア「KMK-Darcii」を有償提供中です。 |
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形状モデルをもとに個人間の距離関係を示す形状分布図を計算できるようになります。また、分布図中央に位置する平均形状や分布図周辺に位置する仮想形状を合成できます。 モデル化された複数の人体形状データから、形状分布図を計算したり、分布軸上に配列する仮想形状を計算するソフトウェア「Human Body Statistica」を有償提供中です。 |
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デジタル空間内のシミュレーションだけでプロダクションは完結しません。実際に平均形状などを模型として実体化することも必要になります。このための人体模型も開発しています。たとえば、衣服設計用の人台や、皮膚のやわらかさ(コンプライアンス)を再現したメガネ適合評価用の模型などを開発しています。 |
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これらの人体形状モデル化技術は、体に直接フィットする製品の適合性向上に役立ちます。スポーツシューズ、メガネ、膝サポータ、腰痛バンド、ガスマスク、音響機器メーカと共同研究を実施しています。たとえば、メガネフレームメーカと共同で、日本人男性50人以上の顔形状を計測・モデル化し、分布図を計算して、4つのグループに類型化しました。個々のグループの平均形状をCADに持ち込んで、それぞれに適合するメガネフレームを開発しました。このメガネフレームは“co-co-chi”という名称で、市販されています。 |
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文献
- 持丸正明, 河内まき子: デジタル人体モデルによるオンデマンド着装品, 電子情報通信学会技術報告, CQ2003-114, MVE2003-105, pp.39-42, 2004
- 持丸正明, 河内まき子: デジタル人体形状に基づく着装品のオンデマンド製造, 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 8 (4), pp.407-412, 2003