研究内容人に合わせるデジタルヒューマン

指先変形計測に基づく触覚モデリング


研究の概要

VRやロボティックスにおける触覚センサ/ディスプレイ,製品デザインにおける触感シミュレータ等に応用可能な触覚モデルを構築するためには,人が指先で検出する接触状態(物理量)と,それに応じ発生する触感(心理量)との関係を数学的に,且つ相互変換可能な形でモデル化する必要がある.つまり,任意の指先接触状態が与えられた時に,それに対し発生する触感が計算可能でなければならない(逆もまた然り).

本研究では指先変形に着目した触覚のモデル化を行う.なぜなら変形は,

  1. 数学的なモデル化が容易
  2. 触覚受容器応答と等価

であるため,先に述べた「数学的」と「相互変換可能」という要件を満たすことができると考えたからである.

指先変形計測装置

指先変形計測装置

本研究で開発した指先変形計測装置の構成を示す.この装置は,透過型6軸力センサ,同軸光源,CCDカメラ,そして直交3軸リニアステージより成る.力センサからは指先接触力が,CCDカメラからは指先変形(接触面内指紋パターンの歪み)が計測できる.また,固定された指先に対し,任意の条件でリニアステージを駆動することで,再現性の高い変形計測が実現できる.

構築した計測装置の仕様を以下に列挙する.

力センサ
定格
力:10[N],モーメント:0.5 [Nm]
精度 2.0 [%] 以下
剛性
定格力印加時の最大変形10[um] 以下
CCDカメラ
解像度
574x768[pixel] (約30 [um/pixel])
精度
リニアステージエンコーダでの計測位置に対し5 [um] 以下  (16 [mm/sec] で駆動時)
サンプリングレート
100 [Hz]
リニアステージ
位置決め精度
目標軌道に対し10 [um] 以下 (16 [mm/sec]で駆動時)

変形計測結果
変形計測結果1 変形計測結果2
(a)
(b)

変形計測結果3

変形計測結果4
(c)
(d)

変形計測結果を示す.ただし,この画像列は静止した計測面に対し画面左方向に能動的ななぞり運動を行うときの指先接触面指紋画像であり.指先変形はカラーマップ及び黒線で示している.ここで,指先変形 (滑り) が一様に発生しないことに留意されたい.つまり (b) から (c)へと時刻が経過するにつれ,接触領域境界から接触領域中央へと滑り領域が拡大し,最終的に (d) において接触面全体が滑り始める.

このように,弾性体の接触領域で発生する不均一な滑りは初期滑りと呼ばれている.初期滑りの発生により,皮膚内歪み場が特徴的に変化するため,この現象が滑りの前兆の知覚や,把持力制御を行う上で必要不可欠な接触情報となり得る考えられている.

まとめ
  • 高精度かつ高速な指先変形計測装置を開発した
  • 撮像された指先接触面画像から,初期滑り現象の発生を確認した

今後は,特に指先における滑り(またはその前兆)の知覚を対象に,そのメカニズムを解明し数学的モデル化を試みる.