乳幼児行動シミュレータ
概要
乳幼児の事故の傾向が長年変化していないにも関わらず、効果的な対策を開発できていない。
乳幼児の行動やそれに伴う事故を解明するためのツールがないためである。
この問題点を解決するためには、計算機上で乳幼児の行動を再現し、事故をシミュレーションするツールの開発が重要である。
本研究では、乳幼児の行動は、環境の状態と年齢による発達状況に大きく依存していると考え、
それらのデータを基に仮想空間内で乳幼児の行動シミュレーションシステムを開発している。
過去の事故事例を基に事故データベースを作成し、行動シミュレータと統合することで、
住宅内の安全状況の評価、事故の原因解明への応用などが期待できる。
行動のモデル化
乳幼児の行動に関連する要素を以下のように内的要因と外的要因に分けた。
内的要因は、乳幼児の発達行動や生理といった乳幼児自体に関連する要素であり、
外的要因は、乳幼児の周辺の物体を含めた環境である。
これらのうち、乳幼児の行動に大きく影響を与えると考えられる発達行動と、物体の興味・行動を誘発する機能に関してモデル化を行った。
発達行動モデル
発達行動モデルとは、月齢・年齢と可能な行動の関係(例:1歳になると歩けるようになる)と、
行動の遷移(例:座る⇒立つは可能、座る⇒走るは不可能)をモデル化したものである。
モデル化には、Denver IIと呼ばれる小児科医が乳幼児の発達段階を検査するためのチェックシートを用いた。
環境モデル
- 興味を誘発する機能
- 行動を誘発する機能
乳幼児行動シミュレータの開発と伴に行っている乳幼児の行動観察から得られた、距離と興味の関係を用いてモデル化した。
乳幼児が物体に対してどのような行動をとるのかを、行動観察から得られた行動と事故事例から得られた行動を用いてモデル化した。
行動生成手法
以下の手法により、行動とその行動をとる確率のセットがリストとして得られる。
例えば、ボールを掴む 0.2、机を使ってつかまり立ち 0.6、椅子に登る 0.4。
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@物体に対して興味を持つ確率の算出 A物体により行動を誘発される確率の算出 B状態遷移確率に基づく次にとる行動の確率の算出 C発達段階に基づく行動をとる確率の算出 D次にとる行動の確率の算出 |
現段階での行動シミュレータの検証
シミュレーション結果と乳幼児の行動観察から得られたデータを比較することで検証を行った。
比較のために以下の計算を行った。
包含率:シミュレータが結果として出力する行動の候補の中に実際の乳幼児がとった行動が含まれている割合
寄与率:行動の確率に閾値を設定し、その閾値変化が包含率に与える影響の割合
グラフの横軸は、次に乳幼児がとる行動の確率に設定した閾値を示している。 また、左縦軸は、把持達成行動の包含率を示しており、右縦軸は、包含率に対する閾値の変化の寄与率を示している。 グラフから、閾値を低くしていくと包含率は徐々に高くなっていくことが分かる。閾値を低くすることによって、 次に乳幼児がとる行動の確率のうち、確率値が低い行動、つまりシミュレータがあまり起こらないと予測した行動も 対象に含めシミュレーションを行うことになるので、把持達成行動の包含率が高くなる。 寄与率は、閾値を低くしていくと、低下していく。 このことは、シミュレータが起こる可能性が高いと予測した行動が包含率に大きな影響を与え、逆にシミュレータがあまり起こらないと予測した行動が包含率に与える影響は小さいということを意味している。 つまり、シミュレータが起きる確率が高いと予測した行動が、実際にも起こる確率が高く、 逆にシミュレータが起こる確率が低いと予測した行動が、実際にも起こる確率が低いということを意味しており、 作成した把持達成行動モデルの有効性を示している。
比較のために以下の計算を行った。
包含率:シミュレータが結果として出力する行動の候補の中に実際の乳幼児がとった行動が含まれている割合
寄与率:行動の確率に閾値を設定し、その閾値変化が包含率に与える影響の割合
結果
グラフの横軸は、次に乳幼児がとる行動の確率に設定した閾値を示している。 また、左縦軸は、把持達成行動の包含率を示しており、右縦軸は、包含率に対する閾値の変化の寄与率を示している。 グラフから、閾値を低くしていくと包含率は徐々に高くなっていくことが分かる。閾値を低くすることによって、 次に乳幼児がとる行動の確率のうち、確率値が低い行動、つまりシミュレータがあまり起こらないと予測した行動も 対象に含めシミュレーションを行うことになるので、把持達成行動の包含率が高くなる。 寄与率は、閾値を低くしていくと、低下していく。 このことは、シミュレータが起こる可能性が高いと予測した行動が包含率に大きな影響を与え、逆にシミュレータがあまり起こらないと予測した行動が包含率に与える影響は小さいということを意味している。 つまり、シミュレータが起きる確率が高いと予測した行動が、実際にも起こる確率が高く、 逆にシミュレータが起こる確率が低いと予測した行動が、実際にも起こる確率が低いということを意味しており、 作成した把持達成行動モデルの有効性を示している。
参考文献
- K. Kitamura, Y. Nishida, N. Matsumoto, Y. Motomura, T. Yamanaka, H. Mizoguchi, "Development of Infant Behavior Simulator: Modeling Grasping Achievement Behavior Based on Developmental Behavior Model and Environmental Interest Induction Model," Journal of Robotics and Mechatronics, Vol.17, No.6, 2005 (in press)
- 北村光司, 西田佳史, 松本修明, 本村陽一, 山中龍宏, 溝口博, "乳幼児行動の総合的理解のための乳幼児行動シミュレータ:乳幼児行動モデルに基づく乳幼児行動の視覚化," 第23回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp. pp. 3F31(1)-(4), September 2005
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- Y. Nishida, K. Kitamura, Y. Motomura, A. Simo, T. Yamanaka, "Infant Behavior Simulation: Computational Approach to Infant Safety," in Proceedings of the 4th IARP/IEEE-RAS/EURON Workshop on Technical Challenges for Dependable Robots in Human Environments, T16-01(1)-(12), June 2005
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- 西田佳史, 本村陽一, "人間の計算論に基づくデジタルヒューマンコンテンツ 〜乳幼児行動の計算論に基づく乳幼児行動シミュレータ〜," 第1回デジタルコンテンツシンポジウム講演予稿集, S2-5(1)-(6), May 2005(東京 科学技術館)
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- 北村光司, 西田佳史, 本村陽一, 山中龍宏, 溝口博, "住宅内における乳幼児行動シミュレータ," 第22回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 1A24(1)-(2), September 2004
- 北村光司, 西田佳史, 本村陽一, 山中龍宏, 溝口博, "環境モデルと発達行動モデルに基づく乳幼児行動シミュレータ," 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会'04講演論文集, 1A1-H-48(1)-(4), June 2004
- 西田佳史, "赤ちゃん見守り支援〜今を見る技術・一歩先を見る技術〜," 第4回日本赤ちゃん学会学術集会プログラム抄録集, pp. 14-15, April 2004
- 本村陽一, 西田佳史, 北村光司, 山中龍宏, "小児の事故予防のためのヒューマンモデリング計画," 人工知能学会第18回全国大会論文集, 3D2-06(1)-(2) June 2004